このたび msb gallery では、森本太郎の個展「焔の輪郭」を開催いたします。

 

森本のペインティングは、画像を独自の方法で解析したデータをもとに、ユニークな技法で彩色が施されています。それはあたかも水中で物事を見るごとく、イメージが単純化され、ぼんやりとしっかりと表現されています。

 

本展では、蝋燭の焔をテーマに、単なる光を表現するにとどまらず、見つめる先に見えるものを探究しながら制作した連作を展示いたします。

闇を照らす焔。森本の描く焔は我々をどこへ誘うのでしょうか?

 

静寂の光のなかに、各々が見出す想像の世界をお楽しみいただければ嬉しく思います。

 

 

 

 

 

 

蝋燭に灯された焔

 

今年になって再び蝋燭の焔を題材にしようと思い立ったのは、小さな焔が誰かのために灯される場面をニュースで目にしたばかりでなく、実際に、自分も家族のために焔を灯した瞬間があり、頭の中に焔のイメージが消えずに残っていたからだと思います。蝋燭の焔をモチーフにした作品は、以前にも描いており、その時は、フランスの科学哲学者・詩人のガストン・バシュラールの著書『蝋燭の焔』に触れてインスピレーションを得ました。

 

バシュラールによる、蝋燭の焔をめぐる詩的イマージュは、小さな焔の光が容易に点いては消える性質に、人間存在を重ね合わせて見ることや、焔が風に乱されてもすぐ立ち直ろうとする現象に、ポジティブな意志を読みとることなど、さまざまな文献の引用をもとに、多様な解釈を生成させています。

 

そうしたイマージュが内包する、想像させる力について、私としては視覚的な図像を作ることから探り、考えていきたいという想いがあります。私はこれまで、身近な印刷物や自分で撮影した写真などの画像を元に下絵を作り、ペインティングを制作してきましたが、今回はさらに、名画のなかに描く対象を求める新たな展開を加えました。

 

スマートフォンで撮影した、灯された蝋燭のスナップや、過去に手がけたものの、絵画にはしていなかった画像を見返しながら、Photoshopで下絵を作るうちに、ふと、ジョルジュ・ド・ラ・トゥールの描いた蝋燭やランプの焔を連想しました。それらは400年ほど前に描かれ、今も絵画の中で光源として人物や室内のものを照らしだしています。

 

現在自分が見ている焔、そしてかつて画家が灯した焔を画像として受け取り、いま再び描いてみることで何が見えてくるのか。私はこれまでと同様の手法で、できるだけ自分の主観を取り払うために、写真や絵画の画像から具体的なマチエールをなくし、イメージをフラットにするために、Photoshopを用いて輪郭と色面で捉えなおすことから始めました。そこに潜むかたちや色彩を探り、それまで見えていなかった別の何かを提示できないかと制作を介して模索しました。

 

焔からもたらされ、目の前に現れたイメージは、これから何を照らし出すでしょうか。ギャラリーの親密な空間で、過去と現在のあいだにゆらめく焔を眺めてみたいと思います。

 

 

森本太郎

 

 

 

 

 

 

森本 太郎

 

1969 岡山県倉敷市生まれ

1994 東京造形大学造形学部デザイン学科卒業

1995 東京造形大学研究生修了

 

 

 

個展

2022 「孤独の池」GALLERY TAGA2, 東京

2020 neutral tonesvoid東京

2019 「呼応するインテリア」GALLERY TAGA2, 東京

2017 「静謐のありか」GALLERY TAGA2, 東京

2016 「イメージはよろこび」switch point, 東京

2015 vestigesGALLERY TAGA2, 東京

2012 「イメージの縁 ─ ここにあり、ここではないどこか」STORE FRONT, 東京

2010 「メディウム ─ 中庸と媒介」switch point, 東京

2009 「つなぎとめるもの」奈義町現代美術館, 岡山

2008 「花と髪」アユミギャラリー, 東京

2005 painting/embroiderySpace Kobo & Tomo, 東京・銀座

    project N 23 森本太郎」東京オペラシティアートギャラリー, 東京

2004 「残像 ─ after image」アユミギャラリー東京

         Tour de Fleurs -broderie-, café art project vol.5」森美術館スタッフカフェ東京

         Tour de Fleurs -broderie-Restaurant PIETRO, 東京/Café du Sourire 四季岡山

2003 souvenir ─ 物質と記憶」アユミギャラリー, 東京

2002 reminder ─ 記憶の連鎖」Space Kobo & Tomo, 東京

2001 recollection」アユミギャラリー東京

1999 「回路を求めて 森本太郎」ギャラリー檜, 東京

1998 「森本太郎」アユミギャラリー, 東京・神楽坂

 

 

グループ展

2021 「花、あたらし/12 Flowersart space kimura ASK?, 東京

    「COLLECTION x 森本太郎」GALLERY TAGA 2, 東京

2020 PLACE x PLACEGALLERY TAGA 2, 東京

2019 「森本 太郎・松原 奈々」三省堂書店成城店, 東京

2016 Footprints ─ 版画工房の仕事 -板津石版画工房」カスヤの森現代美術館, 神奈川

2014 「生命の連鎖・イメージの連鎖」文京区立森鷗外記念館, 東京

         「交点 ─ INTERSECTION POINT, 岡村多佳夫企画と13のアーティスト」アユミギャラリー, 東京

2013 BORDERSHARMAS GALLERY, 東京

2012 Unknown Life ─ Unknown シリーズNo.3」早稲田スコットホールギャラリー東京

         Unknown Voice ─ Unknown シリーズ号外」遊工房Art Space, 東京

         Unknown Surface ─ Unknown シリーズNo.2」アユミギャラリー東京

2010 「間戸/WIND-OWMA2 Gallery, 東京

2009 AUTUMN SONGS」ヴァリエテ本六東京

         「第2回 岡山県新進美術家育成I氏賞選考作品展」岡山天神山文化プラザ, 岡山

2008 ART IN TIME & STYLE MIDTOWN Vol.4TIME & STYLE MIDTOWN, 東京

         EX-SURFACE ─ 拡張する界面」rtlantico gallery, 東京

         「華・非・華 ─ 呉詠潔・森本太郎」VT Artsalon, 台湾・台北

2007 「放飛新視界 ─ 日本当代絵画」PYO Gallery Beijing, 中国・北京

         「イリュージョンの楽園」MA2 Gallery, 東京

         「華・非・華 ─ 呉詠潔・森本太郎」トーキョーワンダーサイト本郷,

2006 「第3回 府中ビエンナーレ 美と価値ポストバブル世代の7人」府中市美術館, 東京

         「岡村多佳夫企画の10周年記念展」アユミギャラリー, 東京

2005  REALITY CHECK造形現代芸術家展」東京造形大学附属横山記念マンズー美術館, 東京

2004 ART BY XEROX 寿限無'04 Super Multiple Art Project」現代美術製作所東京

2003 ARTISTS BY ARTISTS」森アーツセンター東京

2002 「点線 ─ 東京デザインセンター新人賞の進行形展」東京デザインセンター, 東京

2000 「長岡津慶・森本太郎」S-ART, 東京

1999 「岩崎容子・佐野陽一・森本太郎」ギャラリー檜, 東京

1998 ART BY XEROX 寿限無’98世紀末複製事件」現代美術製作所東京

1996 「佐野陽一・森本太郎」アユミギャラリー, 東京

         JACA’96日本ヴィジュアル・アート特別展」伊勢丹美術館, 東京

1995 JACA’95日本ヴィジュアル・アート展」伊勢丹美術館, 東京

1994 JACA’94日本ヴィジュアル・アート展」伊勢丹美術館, 東京

         「第1回 東京デザインセンター新人賞受賞作品展」東京デザインセンター, 東京