このたびmsb gallery では、青木悠太朗の個展「 Distance 」を開催いたします。

自然素材の木を用いて、直接と曲線を組み合わせた作品を制作しています。

本展では、今春滞在したメキシコでの体験から着想し制作した作品群を展示いたします。

作品を通して、他者との関係性や距離感に意識を向け、コミュニケーションのあり方を再認識いたします。

ぜひこの機会に皆様にもご体感いただければ嬉しく思います。

 

 

 

 

 

ステートメント

 

2025年5月、私は3週間メキシコのユカタン半島に滞在しました。2年間住んだメキシコへの6年ぶりの再訪でしたが、メリダという街を訪れるのは初めてでした。特に記憶に残っているのは、日本とは質の異なる厳しい暑さです。日中の強い日差しは目を十分に開けられないほど眩しく、体力を奪い、乾燥した空気と相まって、外出は危険だと感じるほどでした。現地での生活リズムは日中の活動を抑え、気温が下がる夕方や夜に活発です。私自身も夜間の活動が自然と増え、この街の独特なリズムに溶け込んでいきました。

 

夜のメリダの街を歩いていると、不思議な形をした椅子に出会いました。街の至る所にあるその椅子は「silla de confidente(親友の椅子)」と呼ばれ、座る二人が向かい合うように配置されていました。この椅子の特徴は、対話を促しながらも、物理的な接触は許さないという点にあります。

この椅子の起源には諸説ありますが、ヨーロッパの「conversation chair」が元となり、メリダではある父親が、娘とその恋人の距離を保つために作らせたという言い伝えが残っています。このような背景からは、椅子が単なる機能的な家具ではなく、人の感情や関係性の歴史を内包していると考えることができます。

私はこの椅子から、人と人との「距離」を再考するインスピレーションを得ました。たとえば電車内の座席選びが示すように、私たちは無意識のうちに他者との間に心理的・物理的な距離を測っています。この椅子のかたちの構成から、最小限の公共空間を再現することで、その距離を顕在化させようと考えました。

 

今回の作品では、二つの座面というシンプルな構造を用いて、椅子として快適な形を考え、そこに座る人々の関係性を彫刻します。友人同士が座ればリラックスした空間が生まれる一方、初対面の二人では緊張感が漂います。鑑賞者はこの椅子に座ることで、他者との関係性や、コミュニケーションのあり方を再認識するでしょう。これは、座る人自身の心理的変化を通じて、内在する距離感を掘り起こすことを目的としています。

従来の彫刻が素材を「彫り刻む」ことで形をつくり出すのに対し、この作品は人と人との関係性そのものを彫り進めるプロセスを表現します。見る者は、この椅子を通じて自身の人間関係における距離感や他者との関わりについて深く見つめ直すきっかけを得るでしょう。これは私たち自身の内面に問いかける対話的な彫刻です。

 

メリダでのこれらの出会いは、私にとって不思議な縁から始まっています。夜の街で出会った椅子だけでなく、日中の強い日差しが作り出す明暗のコントラストも、人々の生活に深く根ざした習慣に影響を与えていることを実感しました。私はこれらの滞在時の経験を、彫刻作品を通して表現します。

 

 

青木 悠太朗

 

 

 

 

 

 

青木 悠太朗

1988  静岡県静岡市生まれ

2013  東海大学大学院芸術学研究科造型芸術専攻 修了

 

 

受賞歴

2021 「The 16th TAGBOAT AWARD」審査員特別賞受賞 (審査員 小山登美夫氏)

2017 「渋谷芸術祭 2017」審査員特別賞受賞 (審査員 小山登美夫氏)

2015 「第10回大黒屋現代アート公募展」大賞受賞

 

 

個展

2024 「空間の圧縮」フェルケール博物館, 静岡

         「Perspective」msb gallery, 東京

         「新しい習慣」TS4312, 東京

2023 「他山の石」KATSUYA SUSUKI GALLERY, 東京

2021 「double」MONO.LOGUES, 東京

         「東京遊牧生活」art gallery closet, 東京

2020 「Quien sabe」板室温泉大黒屋, 栃木

2019 「Puerta del cielo 空の扉」Studio Block M74, メキシコシティ

2018 「Madera para cosechar」CASA EQUIS, メキシコシティ

2017 「Oasis」nap gallery, 東京

2016 「青木悠太朗展」板室温泉大黒屋, 栃木

2015 「青木悠太朗展」ギャラリーUDONOS, 静岡

         「青木悠太朗展」ギャラリー現, 東京

 

グループ展

2024 「みつめる」簗田寺, 東京

2023 「みつめる」簗田寺, 東京

         「マツモト建築芸術祭」下町会館, 長野

2022 「出張モノローグス at ガスボン #1」GASBON METABOLISM, 山梨

         「温泉大作戦」AOYAMA | MEGURO, 東京

         「CORE part7」tagboat gallery, 東京

         「斜と風」KATSUYA SUSUKI GALLERY, 東京

         「tagboat Art Fair 2022」東京ポートシティ竹芝, 東京

         「grid」biscuit gallery, 東京

2021 「TAGBOAT AWARD SELECTS」tagboat gallery, 東京

         「The 16th TAGBOAT AWARD」渋谷ヒカリエ CUBE1,2,3, 東京

         「みつめる」FEI ART MUSEUM YOKOHAMA, 神奈川

2019 「El castillo de los ladrillos rotos」guadalajara90210, メキシコシティ)

         「El jardin de Galileo」guadalajara90210, メキシコシティ)

2018 「草原小品展」ギャラリーKINGYO, 東京

         「SHIBUYA AWARDS 2017 ART部門 受賞作品展」Bunkamura Wall Gallery, 東京

2017 「渋谷芸術祭 2017」渋谷駅構内特設会場, 東京

         「緑と道の美術展」黒川海道緑地, 神奈川

         「草原小品展」ギャラリーKINGYO, 東京

2015 「LOGGER Exhibition」art sea, 神奈川

         「見つめる」神奈川県民ホール, 神奈川

         「第10回大黒屋現代アート公募展」板室温泉大黒屋, 栃木

2014 「第50回 神奈川県美術展」神奈川県民ホール, 神奈川

         「第2回 大草原展」ギャラリーKINGYO, 東京

2013 「第2回 Derby展」ギャラリーKINGYO, 東京

         「青木悠太朗×守屋美加展」人形町Vision’s, 東京

         「WORKS -8人の仕事-」平塚市美術館神奈川